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第二回 初期衝動
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月姫は奈須の作品世界の入り口にしたかったんです
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月姫を作ったのは、奈須さんの文章をより多くの人に
見てもらうためだったわけですね
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武内 |
そうですね。奈須の文章は癖があるのかな、
と思ってたんですよ。月姫に関しては、奈須の作品世界の
入り口になるような作品にしたい、というのがすごくあって。
わかりにくいところ、たとえば「死の線」とか、
「死の線は物理的にどうこう」と言われても
聞いててよくわからなかったんで(笑)
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一同
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(笑)
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武内
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「壊れやすい線」だけでいい。
そこをなぞったら壊れる、ってだけでいい。
という風にして「わかりやすい」っていうのをすごい強調して。
でもまあ、正直言ってここまで多くの方に受け入れて
もらえるとは思ってなかったですね
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月姫以前にゲームを作った事はあったのでしょうか?
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武内
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PCゲームははじめてですね。
もともと、自分はゲーム会社にいたんですよ。
でまあ、プログラマーとサウンドの友人がいたんで
(自分たちが)シナリオとグラフィックって感じで、
ちょうど揃ったというのもあるんですよ。
その当時はサウンドもプログラマーも職が無くて
時間もあるということだったんで、じゃあちょっと
一緒にやろうかと。かなり・・・
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奈須
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甘い見切り発車だった
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武内
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だったんですね。すぐに作れるだろう、というくらいの
気持ちで始めたんです。そんなにこう、ものすごい
意気込みとかあったわけじゃないですね。今思うと
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エロに関しては、自信はまったく無かったですね(奈須)
自分の中で不安とかは無かったです(武内)
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周りを見たらたまたまゲームが作れる環境だったと。
ここでさらに疑問が出てくるのですがX指定のゲーム、
いわゆる「エロゲー」を表現手段として選んだのは
なぜでしょうか。お二人ともそういった方面のものは
お作りになったことは無かったと思うのですが(註1)
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奈須
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エロに関しては、自信はまったく無かったですね(笑)
自分はそれまで作中で性的表現をする必要性を
感じなかったというか、まったく考えてなかったんで。
で、今回ジャンルがそういった方面になりまして
Hシーンが必要になってくる。もう何が恐かったかっていうと
書けるのかどうか、ていう。
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武内
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そうですね。まあ、単純に自分がそういう
アダルト方面、成年向け方面にちょうど興味があった時期では
あったんですよ。それに奈須を巻き込んだっていう
感じはあるかな、っていうのがありますね。
基本的にあんまりそういうことやってきた奴じゃないんで。
でまあ、同人で出す以上はやっぱり青年向け、
男性向け創作の方が売れる、目を通してもらえるって
いうのがもちろんあったんですけど。
まあ、それでむりやりこういう感じにしよう。
奈須もやってくれ、という感じで。
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奈須
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先ほども武内君が言っていたんですが、
本当にこの業界、文章だけっていうのは弱いんですよ。
で、いかに文章を読んでもらうか考えたら
できるだけ切り札は多い方がいい。それだったら
ビジュアルノベル、ゲーム、かつエロだったら
誰か、まあ10人に1人は見てくれるんじゃないかなあ
という考えは、自分ではありましたね
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武内
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一番初めに体験版を出したんですけど、その時にその、
軽くHシーンを書いてくれ、と言って。
奈須にこういうシチュエーションで書いてくれ、
ていうのを渡したんです。で、帰ってきたモノを見て
「あ、全然できる、やっぱこいつは」って思ったんで。
自分の中で不安とかは無かったですけど。
これなら十分いける、という感じで
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「恋愛ゲーにはするけど、主人公は絶対カッコよくするぞ!」
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恋愛物、エロゲーを作ろうという話を持ちかけたのは
武内さんであったと
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武内
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そうですね。でもまあ、恋愛ゲームを作ろうというつもりは
別になかったんですよ。単純に、自分達が作ったら
ああなるな、ていうくらいで
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奈須
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そもそもこのジャンルにしようと思ったのは理由がありまして。
自分は当時パソコンを持っていなくてPSの方で
「トゥハート」(註2)と「ONE」(註3)をやって、
武内君の家のパソコンで「Kanon」(註4)をやらせて
もらったんです。PC版のONEはわからないんですけど、
Kanonは正直言ってHシーンにまったく必要性が
無いんですよね
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奈須
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恋愛ゲーとビジュアルノベルは狙う所が違うんですけど。
とりあえず便宜的にギャルゲーと言った方が
わかりやすいですかね。実はすごい嫌だったんですよ。
その、たしかに面白かったんですけど、面白いだけで
燃えるものがなかった。どうせやるならやっぱり、
すごい、本当に伝奇物というか。
まあ、(私は)一番初めの根っこが伝奇物なんで。
そういうその、手に汗握るような物を作りたい。
で、それはその、恋愛ゲーとはちょっと違うだろうと。
先ほどのKanonの話になるんですが、
あれは主人公は主人公として存在していますが
あくまでヒロインが物語を持っていて、ヒロインが持つ物語に
主人公が付き合っているだけだな、と。
いや、それはそれで面白いんですが。まあ、それには
やっぱり多少の不満があった。主人公はやっぱり
プレイヤーの分身。自分がそのゲームの世界で
主人公として活劇したいならば、あくまで物語の
中心は自分であるべき。だから各ヒロインのストーリーに
付き合いながらも、それを左右する者、その世界の
中心になるのは自分でありたい。
ということで、一番初めの企画書で
「恋愛ゲーにはするけど、主人公は絶対カッコよくするぞ」
ていうのを強く念を押して書いたんですよ。
で、とりあえず既存のビジュアルノベル、と言ってもやったのは
「トゥハート」「ONE」「Kanon」くらいでしたから、
そのフォーマットに合わせつつ自分達がやったらこうなるぞ、
というのを作ってみたら「月姫」になった、という感じですね
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to be continued…
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