■第一回 月姫前夜
■第二回 初期衝動
■第三回 産みの苦しみ
■第四回 明暗
■第五回 名残りの月
■第六回 閑話2
■第七回 奈須
■第八回 茄子
■第九回 冥土。
■第十回 比翼の鳥
■番外編 6時間耐久チャット
■番外編 その2 サークル紹介




第十回 比翼の鳥


キャラクターを壊さないように
その後も話が続くように
一番気を遣ったところです
編集 (奈須さんに対して)「月姫」がエロ初挑戦だったわけですが
奈須 自信無かったんですよ。武内君に
「とりあえず、エロ関係は君に任せる。シチュエーションも
流れも君が考えてくれ」と言いまして。
まず武内君が絵をガッとあげていくんですよ。で、
「これはこう始まって、こうなってこうなって
これでフィニッシュ。お願い」
「Yes,Sir!」
で、なんとか形にしたんですが。エロは難しいですね
編集 なるほど。エロ関係は本当に武内さんがすべて
奈須 あとまあ、テーマもすべて彼が考えてくれました
編集 そうしますと、Hシーンに入ると志貴君が、その、
絶倫超人化するのは・・・
一同 (笑)
奈須 あれはですね、生き死にの問題の時にHをするというのは
いいんですが、それで濃厚なHになるかどうか。
それどころではないんじゃないか、と志貴もプレイヤーも
思うんじゃないかと。Hシーンが話の流れを殺してしまう
可能性があるわけです。
かといって淡白なものにしてしまったのではHシーンの
意味が無い。「To Heart」の主人公がHシーンになると
オヤジ化するとよく言われるんですが、あの気持ちは
自分よくわかるんですよ。
エロくしないといけないんだけど、エロくしちゃうと
それまでの話をぶち壊してしまうんです。
あれはその解決策。
というわけで、こちらも解決策としてその、
キれてもらおうかなと(笑)志貴というキャラクターを
壊さないままエロい展開に持って行って、かつその後も
話が続くようにっていうのは「月姫」で
一番気を遣ったとこですね。・・と、カッコよく締めてみます
編集 なるほど。ところで、志貴君は初めてではないですよね?
奈須 はい(笑)
このあたりのお話は「歌月十夜」でチラッと、
勘がいい人だけわかってくださいというレベルで

「ああ、こいつは天才だ」
編集 エロシーンは武内さん担当ということですが
武内 キャラクターを可愛く描く、表現するというのの
ある一つの突き詰めた形だと思うんですよ。
Hシーンというのは。そこが単なる性的な描写だけって
いうゲーム、やっぱり多いじゃないですか。
それって面白くないと思う。そのキャラらしいHシーン
というのがあるべきであって、そこでそのキャラらしさが
出てかわいいなと思うようなものがいい。
そういう思いがあったんで、
各キャラにコンセプトを持たせて「こんな感じで」
っていうのを奈須に伝えました
編集 なるほど。個人的に強く印象に残っているものの中に
翡翠の指しゃぶりがありますが
奈須 自分もあれを提示されて「ああ、こいつは天才だ」と
一同 (爆笑)
武内 まあ、そうですね。翡翠に関しては1人で
悶々と色々描いてたんで
奈須 悶々ってあんた(笑)
武内 本当に、一切決まってなかったんです。
(翡翠の)Hシーンに関しては結構、思いつくものを
描いていったという感じなんですよ。
かなりの量描いたんですけど、どれも結構気に入って
しまったんで。「これも使って。これもこれも」と
奈須に渡していったら量も多くなってしまったし、
何の脈絡も無い、指をしゃぶってるようなシーンも
出てきてしまって。
「無理矢理でもいいから使ってくれ。なんとか使ってくれ」と
奈須 翡翠のHシーンが多くなるというのは読めてました(笑)
読めてたんで、覚悟はしてたんですよ。それに、
ただ単に量が多いんじゃなくてテーマというか、
シチュエーションの妙がある。純粋に書いてみたいという
気になったんでそういった意味では面白かったです。
まあ、実際書き始めると辛いんですけどね(笑)

終わりに
編集 では最後に、お2人に自分のパートナーについて
コメントいただきたいと思います。
奈須きのこにとって「武内崇」とは?
奈須 そうですねえ、野球で言うならまあ、キャッチャーでしょうか。
自分がピッチャーで。武内君は自分にとっていつでも
「第一の読者」なんですよ。とりあえず、
彼を失望させてはいけない。話を武内君に見せて、
面白くないと言われるのは怖い。彼の期待を
裏切りたくないなあと。
まあ、いつもその競い合っている仲間でいたいというか・・・
本人を前にしていうのは恥ずかしいんですが、
唯一無二のパートナーですね
武内 たしかにそうです。キャッチャーなのかなあ、という感じですね。
編集 ありがとうございます。
では、武内崇にとって「奈須きのこ」とは?
武内 高校の時から「こいつにはかなわない」っていうのは
あったんです。初めての作品から凄かった。
読んでて泣いちゃったんですよ。その、ノートに書いたような
作品で泣けてしまうというのは、かなり凄いと思うんですけど。
その当時からずっと・・・目標だったのかなという感じですね。
まあ、今回「月姫」でお互い一緒にできて面白かったし、
今まではホントに・・・なんだろう、「越すべきライバル」
みたいな部分があったんで。
「奈須があれを作ったなら俺はこれで!」っていうような感じ
だったんですけど。まあ、今ではそういうライバルみたいな
部分よりは、互いに作っていこうという
パートナーシップみたいなものが強いですかね。
でもやっぱり、心の中では奈須が出してきた
シチュエーションに対して
「ちょっと待てよ。もう少しこう俺なりに考えて、
何か提案できないかなあ?」という気持ちはやっぱり。
今でも全然失われてないし、それはそれでいいのかなあと
奈須 むしろそれに助けられているというか。
自分は暴走しがちというか、狭く深く行っちゃう
タイプなんで。横から武内君が「ちょっと待て!」という
横槍が入るとハッと気がついて「うん、そうしなくちゃ」
という気になります。
「月姫」が癖がありながらもここまで受け入れられたのは
もう、武内君の力で。自分ひとりだったらこんなことには
ならなかった。・・・というところだったり(照れている)
武内 ですね
編集 理想的なコメント、ありがとうございます(笑)
それでは、今日は長い時間お付き合いいただきまして
ありがとうございました
一同 おつかれさまでしたー
to be continued a little