第十回 比翼の鳥
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キャラクターを壊さないように
その後も話が続くように
一番気を遣ったところです
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(奈須さんに対して)「月姫」がエロ初挑戦だったわけですが
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奈須 |
自信無かったんですよ。武内君に
「とりあえず、エロ関係は君に任せる。シチュエーションも
流れも君が考えてくれ」と言いまして。
まず武内君が絵をガッとあげていくんですよ。で、
「これはこう始まって、こうなってこうなって
これでフィニッシュ。お願い」
「Yes,Sir!」
で、なんとか形にしたんですが。エロは難しいですね
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なるほど。エロ関係は本当に武内さんがすべて
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奈須 |
あとまあ、テーマもすべて彼が考えてくれました
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そうしますと、Hシーンに入ると志貴君が、その、
絶倫超人化するのは・・・
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一同 |
(笑)
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奈須 |
あれはですね、生き死にの問題の時にHをするというのは
いいんですが、それで濃厚なHになるかどうか。
それどころではないんじゃないか、と志貴もプレイヤーも
思うんじゃないかと。Hシーンが話の流れを殺してしまう
可能性があるわけです。
かといって淡白なものにしてしまったのではHシーンの
意味が無い。「To Heart」の主人公がHシーンになると
オヤジ化するとよく言われるんですが、あの気持ちは
自分よくわかるんですよ。
エロくしないといけないんだけど、エロくしちゃうと
それまでの話をぶち壊してしまうんです。
あれはその解決策。
というわけで、こちらも解決策としてその、
キれてもらおうかなと(笑)志貴というキャラクターを
壊さないままエロい展開に持って行って、かつその後も
話が続くようにっていうのは「月姫」で
一番気を遣ったとこですね。・・と、カッコよく締めてみます
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なるほど。ところで、志貴君は初めてではないですよね?
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奈須 |
はい(笑)
このあたりのお話は「歌月十夜」でチラッと、
勘がいい人だけわかってくださいというレベルで
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「ああ、こいつは天才だ」
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エロシーンは武内さん担当ということですが
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武内 |
キャラクターを可愛く描く、表現するというのの
ある一つの突き詰めた形だと思うんですよ。
Hシーンというのは。そこが単なる性的な描写だけって
いうゲーム、やっぱり多いじゃないですか。
それって面白くないと思う。そのキャラらしいHシーン
というのがあるべきであって、そこでそのキャラらしさが
出てかわいいなと思うようなものがいい。
そういう思いがあったんで、
各キャラにコンセプトを持たせて「こんな感じで」
っていうのを奈須に伝えました
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なるほど。個人的に強く印象に残っているものの中に
翡翠の指しゃぶりがありますが
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奈須 |
自分もあれを提示されて「ああ、こいつは天才だ」と
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一同 |
(爆笑)
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武内 |
まあ、そうですね。翡翠に関しては1人で
悶々と色々描いてたんで
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奈須 |
悶々ってあんた(笑)
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武内 |
本当に、一切決まってなかったんです。
(翡翠の)Hシーンに関しては結構、思いつくものを
描いていったという感じなんですよ。
かなりの量描いたんですけど、どれも結構気に入って
しまったんで。「これも使って。これもこれも」と
奈須に渡していったら量も多くなってしまったし、
何の脈絡も無い、指をしゃぶってるようなシーンも
出てきてしまって。
「無理矢理でもいいから使ってくれ。なんとか使ってくれ」と
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奈須 |
翡翠のHシーンが多くなるというのは読めてました(笑)
読めてたんで、覚悟はしてたんですよ。それに、
ただ単に量が多いんじゃなくてテーマというか、
シチュエーションの妙がある。純粋に書いてみたいという
気になったんでそういった意味では面白かったです。
まあ、実際書き始めると辛いんですけどね(笑)
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終わりに
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では最後に、お2人に自分のパートナーについて
コメントいただきたいと思います。
奈須きのこにとって「武内崇」とは?
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奈須 |
そうですねえ、野球で言うならまあ、キャッチャーでしょうか。
自分がピッチャーで。武内君は自分にとっていつでも
「第一の読者」なんですよ。とりあえず、
彼を失望させてはいけない。話を武内君に見せて、
面白くないと言われるのは怖い。彼の期待を
裏切りたくないなあと。
まあ、いつもその競い合っている仲間でいたいというか・・・
本人を前にしていうのは恥ずかしいんですが、
唯一無二のパートナーですね
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武内 |
たしかにそうです。キャッチャーなのかなあ、という感じですね。
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ありがとうございます。
では、武内崇にとって「奈須きのこ」とは?
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武内 |
高校の時から「こいつにはかなわない」っていうのは
あったんです。初めての作品から凄かった。
読んでて泣いちゃったんですよ。その、ノートに書いたような
作品で泣けてしまうというのは、かなり凄いと思うんですけど。
その当時からずっと・・・目標だったのかなという感じですね。
まあ、今回「月姫」でお互い一緒にできて面白かったし、
今まではホントに・・・なんだろう、「越すべきライバル」
みたいな部分があったんで。
「奈須があれを作ったなら俺はこれで!」っていうような感じ
だったんですけど。まあ、今ではそういうライバルみたいな
部分よりは、互いに作っていこうという
パートナーシップみたいなものが強いですかね。
でもやっぱり、心の中では奈須が出してきた
シチュエーションに対して
「ちょっと待てよ。もう少しこう俺なりに考えて、
何か提案できないかなあ?」という気持ちはやっぱり。
今でも全然失われてないし、それはそれでいいのかなあと
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奈須 |
むしろそれに助けられているというか。
自分は暴走しがちというか、狭く深く行っちゃう
タイプなんで。横から武内君が「ちょっと待て!」という
横槍が入るとハッと気がついて「うん、そうしなくちゃ」
という気になります。
「月姫」が癖がありながらもここまで受け入れられたのは
もう、武内君の力で。自分ひとりだったらこんなことには
ならなかった。・・・というところだったり(照れている)
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武内 |
ですね
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理想的なコメント、ありがとうございます(笑)
それでは、今日は長い時間お付き合いいただきまして
ありがとうございました
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一同 |
おつかれさまでしたー
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to be continued a little
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