■第一回 月姫前夜
■第二回 初期衝動
■第三回 産みの苦しみ
■第四回 明暗
■第五回 名残りの月
■第六回 閑話2
■第七回 奈須
■第八回 茄子
■第九回 冥土。
■第十回 比翼の鳥
■番外編 6時間耐久チャット
■番外編 その2 サークル紹介


註1
志貴のクラスメイト。極一部で熱狂的な人気を誇る

註3
原則1人1役の「プレイヤー」に対し、その日の物語の「プレイヤー以外のすべて」を担当する人物。村人から魔王まで、本当にすべてやらされます。大変です

註5
少年ジャンプ連載中の囲碁マンガ。知らない人はコミケに来ているおねえさんに聞いてみよう

註7
月姫ルート序盤、アルクェイド17分割のこと。 17の線を切断しているのに、遺体が17に分割されていることについての質問です

註9
半月版の頃のBBS?で述べていたらしいのですが、未確認。 そのころから見ていた方おられましたら教えてください

註11
「LEAFGUN」氏。月姫応援ページを運営しています。 「月替わり月姫」は必見。HPはこちら。 一つ前の質問の詳細もここを見ればわかります

註13
くろがねぎん氏のHP。 「日替わり」シリーズは絶品です。月姫ファンは是非一度ご覧下さい

註15
奈須さんはウソツキ星人なので信用がありません

註17
奈須さんの小説「魔法使いの夜」の略。先生が主人公らしい


第六回 閑話2


※注意!
第六回は漢話月姫全編を通して最もデンジャーです。
月姫とその周辺を十二分に堪能した人だけ見てください。
中でも「TYPE−MOON」HPの「スタッフ座談会」は必見です。
内容に目を通して後悔しても当方では一切の責任を負いかねます。

「高田君が事故った」
編集 「月姫」に関する疑問点やツッコミなど、お答えいただける
範囲でお願いします。まず、件の高田・・
一同 (爆笑)
編集 ・・陽一氏(註1)についてお聞きしたいのですが
奈須 か、彼はその、最初は軽い気持ちというか、お遊び気分で
名前を使ったんですが・・・それがなぜここまで(笑)
ただ、高田君っていうのは、とてもマンガ的なキャラで
話にしやすいというか・・・
これ以上は本人の名誉に関わるので(笑)
武内 わかってる人間にとってはあれは爆笑ものだったよねー。
「高田君が事故った」みたいな(笑)
奈須 皆さんもよくあんなことに反応したなあと(笑)
編集 高田さんとはどのようなご関係で
奈須 彼ともその、同じ中学校だったんですよ。
テーブルトーク(註2)仲間で、自分がマスター(註3)
をやっているグループでずっとやっていて。
今でもつきあってる友人なんですよ。まあ、すごく
人がいいというか心が広いというか。自分は私生活で
すごくお世話になっていて、わがままを聞いてもらってる人で。
恩返しではないですが名前を出しとこうかな、と。
それだけの軽い気持ちだったんですが・・・
おそろしいですね(笑)

志貴っちと有っち
編集 有彦と志貴が仲良くなったきっかけを
奈須 できれば本編でやりたかったんですよ。
秋葉ルートで丸一日没になった日がありまして。
有彦が噛まれてしまって彼と殺し合う、という話が
あったんです。そこでやる予定だったんですが。
(2人がマブになるエピソードは)
本当にかっきり決まってまして。個人的には「歌月十夜」の
方で是非やりたいですね。あの二人の関係というのはまあ、
なかなかに面白いと思うので

さっちんのモデル
編集 さっちん(弓塚さつき)のモデルについて・・・
奈須 それは絵的な?(笑)
編集 はい。それもありますが?(註4)
武内 「ヒカルの碁」(註5)のあかりです。すごく好きで。
30日のシナリオを10日にして再構成をかけたんですが、
中盤に盛り上がる場所を作ろうということになって。
ネロの方はすぐ決まったんですけど、秋葉ルートで
盛り上げるのはどうしよう、ってなって。
ネロと同じくらいのキャラが欲しい。はじめに考えていたのは
ホモっぽい、カヲル君(註6)みたいな生粋の殺人鬼(笑)
で、志貴の殺人鬼みたいなところを見抜くわけです。
秋葉ルートは志貴が殺人鬼かどうかわからなくなるという
ルートだったので、それに対する伏線になるかと
思ったんですよ。そんな感じで考えていたんですが
(だるそうな声で)「どうせだったら俺女の子の方がいい」って
奈須が言い出して(笑)絵的にはその時
すごくハマっていた、あかりみたいにしたいな、
っていうので描いたキャラですね
奈須 クラスメイトの女の子がいたんですよ。地味ーな子が。
この子は「日常」の大事なキーパーソンとして、立ち絵も
あったんですが、10日に締め直してサヨナラして
しまいました。それが秋葉の話になった時に
やっぱり使おう、という話になって、トントン拍子でサクっと
組みあがってしまいました

真祖アルクェイド
編集 アルクェイドは人工的に抽出された者ということですけれども
奈須 真祖というのは、一番初めの真祖以外は大なり小なり
人為的なものが含まれるんですが。アルクェイドはその中でも
本当に必要でもないのに創られた者。大抵は、そろそろ
新しい真祖という個体ができるぞ、という時に他の真祖が
「今回はこういうことなんで、こういう役割に合った者にしよう」
と言って粘土で形を造るというか、輪郭を決めるのですが。
アルクェイドは零から、本当に零から「最強の真祖を作ろう」と
えー、色々と秘密のある方が・・・(笑)
編集 これ以上は深くツッコまない方が良さそうですね(笑)

17分割の謎
編集 次にですね、このような物がありまして・・・
(プリントアウトされた紙を見せる)
奈須 うわぁー来たあ!(笑)
編集 もうご存知のことと思いますが、
例の「17分割」についてなんですけど(註7)
奈須 その・・ええ・・・・これはホントにもう、整合性より
言葉のインパクト。「17分割!」ていう(註8)
言葉にしながらもまるで絵で見るような
ショックじゃないですか。それを第一に押し出したんで。
それは17に切ったら・・・(笑)
これに関してはあえてつっこんで欲しくないな、と
編集 17という言葉の響きに重点を置いたら、
勢い余って17個に解体していたと
奈須 そういうわけではないんですが(笑)
武内 なんか言ってたよね
奈須 前にそれに関してはちょっと、公式見解らしきものを
述べたんだけど(註9)
武内 なんだっけ?線・・17・・・
奈須 切ったら17分割したというのが最終結論だけど・・・
(・・・・・・・・間・・・・・・・・)(註10)
奈須 ・・・はぁー、恐いですな(笑)まあ、この、アルクェイドを
殺すところが一番初めのショックを与えるところだった
わけですが。あのシーンは書いてて楽しかったです。
もう、何も考えずに「終わったァ。いい出来だ!・・・寝よ」
それが、開けてみればこんな攻撃をされるとは(笑)

志貴君の学校
編集 同じ方からのBBSの書き込みを見たのですが(註11)
志貴の学校の謎ですね。志貴が2年3組なのに
何故シエルが3年B組なんでしょう?
奈須 これに関してはですね、他の学校はどうか
知らないんですが、自分のところは
学校側がA、B、C・・・で
生徒は1、2、3・・・と数えてたんですよ。Aが1で。
アルファベットで呼ぶのはあまりにも差別的と思う生徒が
2年1組、2年2組・・・と呼んでいる。教師側は
2−Bとか呼ぶし、そういうのを気にしない生徒もやっぱり
アルファベットで呼ぶ。自分の中ではその程度の
違いだったんですよ。自分の学校を常識に考えて
しまいましたが、普通だとたしかに商業科とかに
分かれてるように見えるんだーと。
逆にびっくりしましたね(笑)

埋葬機関と吸血鬼
編集 「月姫」世界のキリスト教会について質問です。
あの世界のキリスト教徒が吸血鬼に対して見せる
敵意というのはかなり常軌を逸していますが(註12)
奈須 そうですね。自分もそれを言われまして
たしかに異様っちゃあ異様ですなあ、と。これに関しては
本当に申し訳ないんですが、そう大きな理由は無いんですよ。
月姫世界における教会っていうのは、ともかく人間以外の
モノをすごく毛嫌いしている。元から人間外である
モノについては収拾の幅がききますから敵視に値しない。
元から種が違うからあまり敵視はしないんですけど。
「人間からなってしまったモノ」要するに、自分達に感染する
おそれがある現象に関しては病的なまでに排除したがる。
という理由付けがある程度ですか
編集 それは原始キリスト教のころから?
奈須 埋葬機関ができたあたりから歪み始めたんです。
埋葬機関というのはそれ専門に作られた機関ですから、
それ以外に存在意義が無いわけです。信仰も薄いですから
必要以上に自分達の役割をアピールしなくてはならなかった。
結果、だんだんエスカレートしていったというかたちですね

インドの死徒
編集 「カリー・ド・マルシェ」
一同 (爆笑)
編集 彼は色々と楽しいエピソードを持っていそうですが
奈須 カリー・ド・マルシェはその、なんと表現していいのやら(笑)
「猫娘亭」というHP(註13)の「日替わり月姫」という
マンガがありまして、カレクック(註14)が出てくるんです。
もう自分の中ではあのイメージでして・・・まずいなあ(笑)
まあ、とても愉快な人物です。死徒でありながら・・・
カリーに関してこんなにマジメに語ってもしょうがないと
思うんですが(笑)教会側からも見逃されてるというか
「あんなのは放っといてもオッケーだろう」っていうレベルで
見逃されてて、かつそれなりにシエルと仲がいい
OKSG で、今の話はどこまでが本当なんですか?(註15)
奈須 今のはけっこう、すべてOKよ(笑)
編集 埋葬機関という組織からすると「インドに行くぞ!」
というのはちょっと考えにくいシチュエーションでは
あるのですが。シエルの初仕事らしいですし
奈須 ですよねー。何故インド?って(笑)

殺人鬼と珈琲
編集 琥珀ルートで出てくる殺人鬼の語らいですが
奈須 前半アレで、後半シキが出てきて、っていうのは
皆さんこれまでにもうさんざんやってるわけです。
そこで、琥珀ルートでは知っているということを前提にして
早々にシキに退場していただくという、知っていることを
逆手に取った展開にしたわけです。
まあ、実はそれ以上にやりたかったことが一つだけありまして。
殺人鬼同士の会話っていうのをやりたいな、と。
で、無断で作ってしまったんですが。あの時の志貴は
クスリを盛られて理性が飛んでるんですよ。
で、わからずお互い地で話し合ってるというか・・・
志貴のアブない部分が前面に押し出されていて、かつ
シキの方もハイになっている。昔の志貴と話しているような
感覚でお互いその、ダラダラとしてるんだけど
なんだかすごくしっくりくるような会話をしている。
そういうのをやりたかった
編集 非常に印象深いシーンですが、いかんせん琥珀さんが・・・
奈須 ええ。影からこう(笑)
編集 ですね。裏で悪さをしているので少々わかりにくくて。
あれはすべて彼女の仕業なのですね
奈須 はい。彼女のセッティングというか・・・
がんばってますね琥珀さんも(笑)

紅赤朱は殺せるか?
編集 (志貴は)秋葉の紅赤朱(蜃気楼のような靄)だけ
殺すことができるのではないかという意見がありますが。
琥珀シナリオ作成時にそのような話は無かったのでしょうか?
奈須 紅赤朱を殺せる、殺せないという問題は実は
決めてあったんですよ。ただ、(掲示板などで)皆さん
各自で盛り上がっているのを見ますと、あえて
答えを言う必要は無いんじゃないかと。そういうわけで
ここでそういった話については決定は下しちゃだめかなあ、と
編集 「ネタバレ掲示板」などで最近あまり発言がないのは
奈須 中にはやっぱりすごい面白いことを言ってくれる方が
いますので。自分のつまらない意見を言うよりも
みんなに楽しんでもらいたいですね

鬼種について
編集 遠野の血や鬼種についてお聞きしたいのですが
奈須 遠野は本当に混ざり物が代を重ねてきたものなんです。
月姫世界においては鬼種というのは2種類いまして。
元から鬼と呼ばれる系統樹からして人間とは違う者と、
力ある者達が土蜘蛛だのなんだの呼ばれて
朝廷から追われて隠れ住むようになって、
生物的にちょっとおかしくなってしまった者がいます。
遠野の血に混じっているのは前者ですね(註16)

魔法と魔術
編集 魔法と魔術について
奈須 魔術師協会という「月姫」本編にはまったく関係ない
組織がありまして。魔法と魔術はきっかりと
分けられています。用語辞典で書いてますが、現時点で
魔法と認識できるものは5種類だけ。ということですね
編集 魔法の内容、気になるところではありますが
奈須 えーーーと、まほよ(註17)で1つ、アレで1つ、
あれで1つ・・・
武内 うーん、作品ごとのコアになってますんで
編集 今後に期待ですか
奈須 そうですね。きっかり世界を決めておいて、
月姫以外の作品の時にそれを憶えていると
「あれっ!?」と思うくらいの楽しみ方をさせたいなあと。
「ここで出てくるんだー」っていう

下つき姫
編集 最後に、某所で出てきた「下つき姫」について
お聞きしたいのですが
奈須 あれはですね、その、えー、どうかしてたと申しましょうか(笑)
98年の終わりごろ、まだプロットを人数分作ってるというころに
女性同士の絡みというのが必要なんじゃないかな、
と思ったんですよ。で、ちょうどそのころアルクとシエルの
敵対するシーンを書いてまして。んー、やるとしたらここか、
というわけでアルクェイドさんにがんばってもらおうかと(註18)
ただ、やんなくて良かったなあと(笑)
武内 初耳だったよ、下つき姫
奈須 ホント!?
武内 あの時はじめて聞いたよ
奈須 プロット見てみると書いてあるんよ。カッコがあって、
「ここでこうこうこうするのはどうでしょうか?
これがホントの下つき姫!なんちゃって!」て(笑)
編集 それは、いつもの悪戯書きですか?
奈須 いや、ワープロでこういうのはどうかってしっかりと。
ちょろっとこう、OK出るかなー?、と
武内 キレイに忘れてるわ、それ(笑)

to be continued…

註2
定められたルールに従って行う即興演劇(ごっこ遊びとも言う)。第一回の註3も参照のこと

註4
実はさっちんの前段階の元キャラについて聞こうとしてたのですが、御三方が本棚の方に視線を向けて笑い出したので、それに引きずられてます。思わぬ収穫です

註6
「新世紀エヴァンゲリオン」の登場人物。最後のシ者。知らない人は以下略

註8
第七聖典、17分割、27祖など、作中では7のつく数字がよく使用されます。数秘術のみでなく、言葉の響きを重視した結果かと思われます

註10
この間は再現不可。静まりかえった部屋、ネコアルクのイラストを見ながら「ブーブー!」とつぶやく奈須さん。遠くから響いてくる救急車のサイレンの音(笑)妙に重苦しい一時でした

註12
詳しい説明ははしょりますが、キリスト教と吸血鬼は本来あまり接点がありません。編集の趣味的な質問です(ぉ

註14
「キン肉マン」に登場する、頭にカレーを載せた残虐超人。60万パワー。なお、これは奈須さんの脳内の話であって、オフィシャルな設定ではないので注意

註16
この前後で録音が一度途切れているため、完全ではありません。大意としては本文のような内容であったと記憶しております

註18
ここで言う「がんばる」とはアルクが空想具現化で陽物を具現化し、シエルをどうこうする、という意味。・・・見たかったかも